hayaku metai.../加藤ふみえ

女の子っぽい名前ですが男です

【歴史に刻まれた一戦】世界卓球2017ヒューストン男子シングルス決勝戦 第7ゲーム!

みなさんは、心に残った試合や印象に残った試合って何かありますか?

私が印象に感動した試合は、

世界卓球2017ヒューストン男子シングルス決勝戦 馬龍 vs 樊振東です。

卓球ファンの中ではまさに歴史に残る一戦で、

馬龍の大会連覇か、中国次世代を担う若き樊振東が待ったをかけるのか非常に注目が集まったのを覚えています。

試合はまさに一心一体の攻防が繰り広げられ、勝負の行方は最終第7ゲームに委ねられました。

今回はそのこの試合の真髄が詰まった最終第7ゲームを、

私なりに解説し、お届けしたいと思います。

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■これまでの流れ

この試合はまさに「現世界チャンピオンか?それとも新時代が勝つか」という構図で、歴史を変える一線にふさわしいものでした。

世界卓球シングルス連覇がかかり、当時の中国のエースの馬龍と、中国次世代のエースとされていた樊振東の構図です。

龍王者時代の継続か、樊振東が待ったをかけ新時代の幕が上がるのか、

そんな2人が世界最強をかけてぶつかります。

先に主導権を握ったのは、馬龍でした。

強力なサーブから得意のフォアハンドを活かした攻撃で、樊振東を追い詰めていきます。

ここで万事休すかと思われた樊振東でしたが、徐々に息を吹き返します。

YGサーブを微妙に変化させ馬龍のレシーブを崩すと、

その一瞬の隙を、得意の高速両ハンドでしとめていきます。

また樊振東は、馬龍の一撃を超人並みの反射神経でリターンし、徐々に馬龍に追いついていきます。

そして試合の行方は最終第7ゲームに委ねられます。

この段階では、馬龍は樊振東のYGサーブやチキータからの展開に押され気味で、

ゲームを追いついて勢いに乗る樊振東が、有利と思われていました。

■運命が決まる最終第7ゲーム!

ここまでの樊振東の勢いで最初のサーブで2点ビハインドを得た樊振東が、

このまま制するかと思われましたが、

ここで馬龍が驚きの戦力をとってきます。

馬龍は、この試合初めてバックサイドを切るようなハーフロングのサーブから樊振東のバックを詰めて得点をします。

このハーフロングサーブは強力なチキータを封じるのに有効です。

卓球台から出るか出ないかの微妙なコースが、相手の判断を鈍らせ、

その隙をついて攻撃するという展開に持ち込めます。

ただ、フルゲームの最終セットでこれまでに見せたことがない先方をとる選手は、

普通はいません。

通常だと、最終ゲームは気持ちと気持ちのぶつかり合いになるケースが多い中、

馬龍が冷静さが光っていました。

しかも、舞台は世界卓球シングルス決勝戦

この大舞台の最終第7ゲームにこのサーブを出すという発想と馬龍のメンタルの強さに、私は驚きを隠せませんでした。

また、このバックのハーフロングからの展開は、普段から練習していた訳ではないと思います。

そこを敢えてかけてくる勝負強さもあり、言葉が出ない戦術でした。

このサーブからの展開で、

馬龍は樊振東の勢いを封じることに成功し、リードを奪います。

ただ、ここで引き下がらないのが樊振東。

樊振東はバック対バックの高速ラリーから回り込んでフォアストレートの攻撃で馬龍のフォア側に攻撃し、

今度は逆に馬龍の勢いを奪っていきます。

通常、バック対バックの高速ラリーでから相手のフォアに攻撃する場合、

フォアで回り込まなくても、バックのはやい打点で対応した方が連続攻撃ができるので効果的です。

樊振東はバックも強烈なので、ここを敢えてフォアで行くのはリスキーです。

実際、無理やりフォアでストレートで持っていっているので、体勢が崩れています。

もし相手の返球が成功してしまったら、逆に今度は自分が不利になってしまいます。

ただ、ここを敢えてフォアで行くことの積極性が、

馬龍に点数以上のプレッシャーを与えていると感じます。

世界卓球シングルス決勝の最終第7ゲームで、体力も極限のなか、

この高速ラリーをフォアで仕掛けてくるのは相手にとっては脅威です。

この局面でまだこれだけ動けるのかと。

このプレーでディース(10対10)になり、勝負の行方はわからなくなりました。

■最後の1本

テンオールから先にチャンピオンシップポイントを取ったのは現世界王者の馬龍でした。

樊振東のサーブを短くレシーブして、相手のミスを誘っていました。

ここで馬龍がどんなサーブを出すのかに、注目が集まりました。

馬龍はここまでたくさんの種類のサーブを出してきましたが、

馬龍がサーブから得点する時は、樊振東の意表をつけた時です。

ここでどのサーブを選択するのかに、とても注目が集まりました。

解説の方は、ロングサーブ、ミドル前とおっしゃっていましたが、

私の予想はバックサイドをきるハーフロングサーブ。

このサーブは前半で一度使ってから一度も使っていないので、樊振東の意表をつくにはもってこいだと思っていました。

そして注目が集まる中、馬龍が選択したサーブはなんとバック前!

バック前は、レシーバーにとってチキータを一番やりやすいサーブになります。

チキータからの展開を得意とする樊振東にとっては、まさに追いつく大チャンスになります。

樊振東が十分な大勢でチキータで攻撃したのを見て、誰しもがディースになると思ったなか、

馬龍はここで驚きの戦術をとってきます。

馬龍は樊振東の強力なチキータを、

回り込んでストレートにフォアハンドドライブしたのです。

このボールが決定打となり、馬龍が優勝!

まさに驚きのプレーでした。

このプレーを後から冷静に振り返ってみると、馬龍は樊振東に敢えてチキータをさせ、そこを狙ってカウンターする戦法をとったのに見えます。

樊振東はチキータからのバック勝負を狙っていたので、馬龍のフォアストレートのリターンには、反応できなかったようです。

樊振東からすると、得意のチキータを狙われてくるのは考えもつかなかったと思います。

実際、馬龍の思い通りにチキータさせられています。

この極限の場面で、相手の得意な戦法からチャンスを作るのがすごいです。

敢えてチキータをさせ、そこをカウンターで狙っていく戦法は、一般的ですが、

ここは世界卓球男子シングルス決勝。

連覇がかかる重要な場面で、相手の得意なチキータを狙っていくのはリスキーすぎます。

この突然の戦術転換を、華麗に成功させるのは、馬龍の世界一に君臨する所以だと思います。

試合後にラケットを放り投げ、喜びを爆発させる馬龍!

会場は歓喜の渦に包まれ、馬龍の世界卓球の連覇達成です!

■2人の戦いは現在進行中!

連覇を達成した馬龍は、次の世界卓球シングルスでも優勝をし、3連覇を達成しています。

馬龍の決勝戦を全て見てきましたが、今回紹介した試合が一番の熱線で、ベストゲームだと私は思います。

気持ちと気持ちのぶつかり合いと、緻密な駆け引きを同時に見れるのは、

この試合だけです。

そして、この2人は2023年現味もまだまだ現役選手。

「馬龍 vs 樊振東」の試合はまだまだ継続中です。

次はどんな形で両者が合間見えるのかが、今から楽しみです。